人は必ず成長する存在-1

2006年12月31日

人は必ず成長する存在-1

 生徒さんとの関わりの深さと心の成長は、成績のよう見えるものではありませんがそのつながりの深さが目にみえるものに大きな影響を与えます。

 高3のE子さんとの関わりは彼女が中学2年生の時からでした。彼女は私立の女子校に通っていて、学校のレベルもかなり高く、授業も中3の1学期で中学の内容は終わるといった速いペースでした。
 そのE子さんが、ずっと目標にしていた医歯系の大学に見事合格しました。
「私は数学が伸びない、絶対無理」といつも自信なさげに言っていたE子さんだけに、合格したと塾に報告しに来てくれた時は、本当にうれしかったです。
 でも、彼女との関わりは、決して最初からスムーズではありませんでした。

 何事においても完璧ではないと納得しない彼女は、中学生の時に数学の点数が思うように取れず、「私が点数が取れないのはこの塾のせい」と涙を浮かべながら訴えてきました。普通ならこの時点で彼女は塾をやめていたと思います。

 その彼女との関わりがある時、大きく変わりました。
 彼女が常に、「できる、できない」で一喜一憂していることの原因が家族からの期待であり、そのことが大きなプレッシャ-になっていることを聞かせてもらった時からかもしれません。
 「先生、もういや。疲れた。」と学校での出来事を頻繁に話してくれるようになり、私たちの距離は少しずつ近くなりました。

 そして、彼女は高校生になり塾のかけもちが始まりました。英語が抜群にできる彼女でしたが、彼女には幼い時から医療関係に進学したいとの想いがありました。
でも、学校の先生からは、英語力を生かして文系の大学に進むことを勧められ、理系の大学への進学はかなり大変だとまで言われていました。

 だから絶対に数学や物理ができないとだめと一生懸命努力するのですが、なかなか思うようにならないと夜遅く泣きながら携帯に電話がかかってきたこともありました。
(続く)
  

Posted by kobehiro at 02:45Comments(0)学習塾

塾生に教えられて……

2006年12月22日

塾生に教えられて……

 大学受験のために入塾してきた高3のD君の印象は、明るいけれど自分が本当は何がしたいのかが定かではない生徒さんでした。工業高校に在学しているD君は「工学部でどこか僕のレベルで行ける大学があればいいんですけど。」と言うだけでした。
そんなD君と一緒に勉強する中でこんな話をしてくれました。
「僕、たこ焼き屋さんでバイトをしてるんですけど、こないだ耳が不自由な方がお店に来た時、手話を話せたらその人と話ができるのにと思ったんですよ。町を歩いていても障害をもった人を見かけると何かできることないかなあと思っちゃうんですよ。」

その話を聞いた時、D君ってすごいなあと思い、「その気持ちってきっと君がしたいこととつながってるんじゃない?」と伝えました。そうするとD君は「僕、実は福祉にも興味があるんです。でも今からでは、福祉関係の大学に進学するって難しいですよね」と話してくれました。ところが、しばらくたってD君がうれしそうに「先生、来年、A大学に福祉工学部という学部が新設されるんです。僕、この大学を受けようと思います。」と報告してくれました。
将来、やりたいことが決まったD君はやる気が出てきてもちろん希望通り、A大学に推薦入試で無事合格することができました。このことをきっかけにD君は何事においても積極的になりました。
小学生の時は、授業中、一度も手をあげたことがなく、中学生の時は、クラブ活動においても自分から意見を言ったことがなかったそうです。そのD君が何と新潟地震の被災者の所へボランティアに行く事を決めて、学校の先生にも届けを出したと話してくれたときは驚きました。

「阪神神戸大震災の時、僕は小学生で何も出来なかったんです。その時ボランティアの人たちの活動を見ていて、大きくなったら僕もやってみたいとずっと思っていたんです」と自分の気持ちを話してくれるD君の顔は輝いていました。

 本当に自分のしたかったことが見つかった時、必ず道が開かれていくこと、そして人は変わっていくことをD君の姿から教えてもらいました。
  

Posted by kobehiro at 09:47Comments(0)人生のこと

塾生に励まされて……

2006年12月16日

塾生に励まされて……

先日、塾生が私を励ましてくれたり、支えてくれていることがあると書きました。
今日もそのお話です。
以前、登場した中3のM子さんのことです。
彼女はとても照れ屋さんで、どうも素直に自分のことを話すことが苦手です。
いわゆる斜め45度の生徒さんでしょうか。

そのことをM子さんに伝えたらすかさず「うちは、斜め72度やから」と返事が返ってきます。ああ言えばこう言う手ごわい生徒さんです。
塾でも下級生から「あの人の言っていることようわからへん。こわいわあ」と言われています。

表面上はそんなM子さんですが、実はとても心細やかというか、他人の痛みがわかる生徒さんです。彼女は本を読むことが大好きでいつも学校や町の図書館で本を借りています。

昨日、新しく中1のM君が塾に来たときのことです。その日は何かと忙しくM君につきっきりというわけにはいきませんでした。するとM子さんが私の所によってきてこう言ってくれました。
「先生、あの子、さっきから鉛筆とまっているよ。ほら、以前に塾でわからない所があっても先生に質問できずに、家に帰っておねえちゃんに聞き続けてきた子がいたじゃない。途中でやめた子いたでしょ。あの子もそうならないように気をつけてあげたほうがいいよ」

本当にその通りで、以前M子さんが覚えていてくれたように塾で聞けないことが理由で塾をやめた生徒さんがいたのです。M子さんが私に注意してくれたおかげで、すぐM君に関わることができました。何か、たよりになる同志を見つけたって感じでした。

実は、なぜM子さんがそれほど本を読むようになったかには理由があるのです。
突然、お父さんのお仕事の都合で、小学生の時に学校を変わらなければならなくなったM子さんは新しい小学校のクラスになかなかなじめなかったそうです。
そんな彼女の拠り所は図書館で本を読むことだったそうです。友達がいなくても、本を読むことで学校に通うことができたM子さん。
だから人一倍、他人の寂しさや辛さを敏感に自分に引き寄せることができるのだと思います。

学校でも、不登校のクラスメイトにノートを取って、持っていってあげたり見えない所で友達のことを考えてあげたりしています。
今日、M子さんに「昨日はM君のこと、ありがとう」と伝えると、にこっと笑って意欲的に勉強に取り組んでいました。
他人のことを思いやる心は相手だけでなく自分のやる気のエネルギーを引き出すことにもなるのだなあと思いました。
今日も、塾生に励まされた一日でした。
  

Posted by kobehiro at 00:00Comments(0)学習塾

こどもたちの成長ってこちらが思っているよりもすごい!

2006年12月12日


(原稿と写真の人物とは関係ありません)

こどもたちの成長ってこちらが思っているよりもすごい!

 ともすれば、教師は教える側、生徒は教えられる側と決めつけてしまいがちですが、実はこどもたちの成長ってこちらが思っているよりもすごいと感じることがあります。
 高1のCさんは、中学3年生から塾に通いだした生徒さんです。
よく出てくるつぶやきは「こんなん、無理。絶対できない」でした。
さらに「お母さんが・・・言ってるから」を口にします。
でも、最近ずいぶん変わってきました。
「私、この塾に入ってから自分の考えていること言えるようになった」と言ってくれます。たとえば、中学3年間はずっと運動部でキャプテンとして頑張ってきましたが、高校生になって自分の入りたいクラブがなく、お母さんからは「運動部に入りなさい」と何回も言われたそうです。
 でも今回だけはお母さんが言うからではなく自分の思いをお母さんにきちんと言えたことでお母さんはそれ以上クラブに入りなさいと言わなくなったそうです。
 それに加えて、中学の同級生だったH君が塾をやめたいとH君のお母さんに言ったことでH君のお母さんからCさんに相談の電話があった時のことです。
 CさんはH君のお母さんの話を聞きながら、「H君がおばさんに甘えているのはわかるけど、それはおばさんも私がしたほうが早いからとH君を甘やかしてるんじゃないの。もっとH君の話を聞いてあげたほうがいいよ」とH君のお母さんに率直に言ったそうです
 それを聞いたH君のお母さんは「わかっているんだけどね」と言いつつもCさんの言葉を受けいれたそうです。
 塾でH君のことをCさんと話した時、「H君だけじゃなくてH君のお母さんにも原因があるんやね」と言っていたCさんがH君とお母さんの間を結んでくれていました。そのおかげでH君は今も塾を続けています。こどもたちを励ましたり、アドバイスをしていると思っていましたが、逆に見えない所で支えてもらったり、助けてもらっていたのはこちらでした。
 何よりもたくましく成長したCさんの存在って素敵です。  

Posted by kobehiro at 00:32Comments(0)学習塾

「やればできるのに……」という親の言葉が子どもを縛る??

2006年12月07日


「やればできるのに……」という親の言葉が子どもを縛る??

「あなたは、やればできるのに!」そう子どもさんに言われる方って結構多いのではないでしょうか。
高3のB君もそう言われて育った生徒さんです。確かに、理解力もあるし、そこそこの成績は取ってくる。でも、切実感が乏しく大学入試においてもなかなかエンジンがかからない様子です。
「やればできるのにと言われるからまあ、何とかなるとすぐに思っちゃう」と本人の弁。さらにB君は「小学生のときから・・点は必ず取るように」と言われたそうです。そうするとテスト勉強をしていて、今回は難しいと感じると「どうせ、勉強して点数が取れなくて怒られるんだったら、勉強しなくても一緒か。やって何になる」と無意識に思っていたと話してくれました。

実は、この思いは勉強だけでなく、クラブ活動においても現れていました。自分なりに3年間頑張ったけれど、レギュラーになれなかったB君。
監督から「君はがむしゃらにやってない」と言われたそうです。
どこかつながってはいないでしょうか。
親から言われた言葉って自分が思っている以上に自分のやる気のエネルギーを阻むことがあるのだと感じました。
やる気が起こらないことだけを注意してもなかなか改善されませんが、なぜ、やる気が出ないのかを本人と一緒に探していくと「あーそうか」と納得することですっきりするものです。

今、B君はやっとおしりに火がついたようで、志望校もほぼ定まり受験勉強に取り組んでいます。

  

Posted by kobehiro at 12:12Comments(0)親子関係