親が知らなかった娘の可能性

2007年06月02日

親が知らなかった娘の可能性

 以前におすすめの教材としてこどもの考える力を伸ばす国語練習帳という問題集を紹介しました。この問題集はなかなかユニークなので私も小学生に学校の問題集と併用して使っています。

 先日も小5の3人の女の子たちにある言葉を自分のことばで表現しましょうという単元があったので取り組んでもらいました。例として「くじら」だったら「海に住んでいる巨大な動物」と記していました。
いくつかの言葉で私がとても感動した彼女たちの語録をご紹介します。

「成長」 自分が変わること (R子ちゃん)
良いことを学ぶこと (E子ちゃん)
「右と左」 見える景色が違う (E子ちゃん)
「あなた」 世界で一人しかいない大切な相手 (K子ちゃん)

 教室で3人が順番に発表してくれるのを聞いて私はとても感動しました。
 こどもたちの隠されていた可能性に触れたようで、日頃の勉強だけではわからない想像力や個性に出会えてうれしかったです。

 この2~3日後、K子ちゃんのお母さんと面談する機会があり、このことをお話するとK子ちゃんのお母さんもそのプリントに目を通されており、「私が知らなかった娘の可能性を引き出してもらいありがとうございました」と喜んでくださっていました。
 もちろん、これは、私が引き出したわけでもなく、もともと彼女が持っていた一面であり、可能性と思います。
 自分だけでなく、塾で友達の思いを聞くことで「あーそんな感じ方もあるのか」とより自分の世界を広げてもらえるのではと感じました。

hana3響ゼミ・中澤弘子塾長ブログは当塾の公式サイトに全文掲載しています。
http://www.kyo-zemi.net/index.html?_startPage=7  

Posted by kobehiro at 01:31Comments(0)人生のこと

贈る言葉-4

2007年03月21日

受験という試練が本気の心が開花させる。

 3月20日は公立高校の合格発表の日でした。
 中3のT君は、1カ月間だけ勉強を見てほしいとお母さんから頼まれました。同時に、家では勉強できないというご本人の希望でもありました。当初は受験するつもり高校のレベルがそんなに高くないこともあって何とかなるだろうとの思いがT君にありました。もともとT君はどちらかというと切実感がなくご両親からもしかられた経験がない生徒さんでした。
 しかし、T君が受験する高校は、注目の専門技術が身に付くということもあって、今年はなんと一番倍率が高くなりました。そのような状況下にあっても、T君は宿題をやって来なかったので、度々私も厳しく注意したこともありました。でも、だからといってT君がやる気になったようには見えませんでした。
 私がこのままではどうしようもないと思ったとき、助け舟をだしてくれたのは、塾に通う同じ中学校の卒業生の高1のH君でした。

H君「勉強をしないと高校に合格できない、とT君に言ってもあかんで」
私「えー、じゃあ何も言わないほうがいいの」
H君「そんなんしたらあかんで。いちおうT君は塾に来ることが勉強せんとあかんと思って来てるんだから。先生が面倒みんとあかんで」

 H君とのそんな問答があり、私も今までの関わり方を変えていかなければと思うようになりました。
 幸い、私の塾では、折々に自分で自分の心の傾向を発見するシートに取り組む時間をとっています。今回はT君に同伴してそのシートに取り組んでもらうことにしました。
 シートの質問に取り組んでもらうとT君は、物事に対して後回しにしてその結果どうしようもなくなる現実を作り出していたこと、「まあ、いいか。何とかなる」といつも曖昧にする傾向が強いことがわかってきました。同時に、その心の傾向を詳しく説明しているガイドブックを一緒に読む中で、その一節に「あなたは、いい人だけで頼りにならないと言われたことがあります」という内容がありました。
 その一節を読んだとき、T君は「僕、友達からこう言われたことがあります」と答えてくれました。そして、どのようにその傾向を改善していくかという所でT君は宿題をやってこなかったら自分にペナルティをかける意味で「テレビを3日間見ない」ことを自分から決めてくれました。
 そして最後に「僕は今まで自分が変わらなければいけないと思ったことはなかったけど、今日、初めて変わらなければいけないと思いました」と言ってくれました。
 それからのT君は本当に変わっていきました。
 今までは家で勉強ができないと言っていたのが、1日3時間、時には5時間と家で勉強するようになりました。
 そして、3月20日の合格発表の日、見事、自分が志望した高校に合格することができました。お母さんにお聞きすると同じ中学から10人の生徒さんが受験し、その学校に合格したのはたった4人だけだったそうです。
 T君、本当におめでとう。願いに向かって自分が本気になって取り組めば、必ず道は開けることを今回の受験を通して実感したのではないでしょうか。
私が師事している先生からこのようなことを教えてもらいました。

「桜が咲くにはその花の芽が休眠している時に、冷たい空気にあたって桜の芽が目覚める。だから冬の季節のない国では桜は咲かないのです。桜にとって休眠打破は必要なのです」

 このことばは、桜だけではなく私たちにも必要だと思いました。受験という試練があったからこそT君は自分の内にある本気の心に目覚めたのではないでしょうか。
 これからも、新しい高校生活において是非、自分の心の中にある素敵な花を咲かせてほしいと心から願います。  続きを読む

Posted by kobehiro at 11:23Comments(0)人生のこと

贈る言葉-3

2007年03月14日

贈る言葉-3

 3月13日は、中学校の卒業式です。塾の中3生に卒業お祝いメールを送りました。

卒業って新しい世界への旅立ちってイメージがします。
「13日、中学の卒業式やよ」と言ったら「もう、そんな時期か。早いなあ。」と言われました。たった1年前の出来事なのですが……。

 中3生のC君もその一人です。彼は外国からお母さんと二人で小学6年生の時に神戸にやってきました。世界的に活躍できるようにとのご両親の思いから日本に来ることになったそうです。彼が塾に入ってきたのは去年の夏休みからでした。

 「とても日本語がうまいなあ」がC君の第一印象でした。二人きりの授業の中で、C君は今までのことをいろいろ話してくれました。
 初めて日本に来たときは習慣が違うことでとまどったことや、中学生になってからは、お母さんが夜も働いていたので、夜よく遊んでいたことやけんかをしたことなど、いわゆるやんちゃ坊主だったそうです。
 「先生、怒りってどうやったら抑えることができるんや?」と真剣に言われたこともありました。
 でも、私が最初に会った時、「C君は将来どうなりたいの?」とたずねたことがあります。すると「お金持ちになりたい」との返事が返ってきました。
 「どうしてお金持ちになりたいの?」
 「おかんに楽させてやりたいから」と言われました。その言葉がとても心に残りました。
 塾に入ってからは、受験が近づいてきても必死になって勉強するのでもなく、特に英語は苦手でなかなかはかどりませんでした。
 そうこうしているうちに進路を決定する時期になりました。
 当初、C君は合格できる高校ということでA校にしたと報告してくれました。
 でもC君の願いは技術を身につけて就職するということだったので普通科しかないA校は違うのではと思い、C君にそのことを話しました。
 「俺も迷ったけど、学校の先生が工業系のB校のことを薦めてくれなかったから行けないと思ってA校にした」
 「でも、大切なことやから、ちゃんと考えたほうがいいよ。A校とB校の学校のパンフレットを持っいるなら一緒に比べてみよう」と提案しました。
 12月の寒い日でしたが、C君はいったん家に帰って、二つの学校のパンフレットを持ってきてくれました。そこから、就職先の会社を比べたり、資格がどれくらい取れるのかをみていきました。
 「やっぱりB校の方が君が入りたい車関係の会社にも就職できるよ」と言うと、C君は「ほんまやなあ。俺、B校のほうが向いていると思う。おかんも工業系の学校に行ってほしいと言っていたし」ということでC君は次の日、担任の先生に志望校の変更をたのみ、受け入れてもらうことができました。そして、B校に合格することができました。
 卒業式の日、C君が塾に顔を見せてくれました。すっきりした笑顔で「卒業しました。ありがとうございました」と頭を下げるC君に出会い、C君をここまでにしたのはお母さんを支えたいというC君の変わらぬ気持ちだったのではと改めて感じました。
 表面上は親にたいして「うざい」とかきつい言葉を投げかけていても、本心は親との絆を大切に思っているやさしい心をどの子も持っているのだと思います。

 そのことを信じて、中3生の皆さん、新しい高校生活が充実した日々となりますことを心より祈っています。  続きを読む

Posted by kobehiro at 01:26Comments(0)人生のこと

旅立ちに向けて……

2007年03月01日

旅立ちに向けて……

 当塾では、毎年中3生に卒業作文を書いてもらっています。
文章を通して自分の気持ちを表現する練習も兼ねて取り組んでもらっています。
何を書いても自由ですが、一応、起承転結の流れで書けるように以下のように決めています。

起:以前の自分はどうであったか
承:今はどのように変わりつつあるか
転:なぜ変わることができたのか
結:高校生になるにあたっての志

となっています。

 原稿用紙1枚~2枚程度で書いてもらい、後でこちらがパソコンで打ったものを卒業記念に一人ひとりに渡すようにしています。
 何年かして「あーあの時、自分はこんな風に思っていたのか」と振り返ってもらえればいいし、その時の志を思い出してくれたらと願って始めました。

 では、今年の中3生の4人の中からM子さんが書いてくれた内容の一部をお伝えしたいと思います。

 中学1年生の時の私は、結構自分に甘かったと思う。
 テストで悪い点数をとっても平気で、まあこんなものだろうと油断していた。
 2年生になってからは、少しは後悔したが、それでも何とかしようと努力もしなかった。
 そのうち、だんだん後悔もしなくなり、3年生になるとますますその傾向は悪化していった。
 そうこうしているうちに2学期となり、後悔しない私の心は白黒の世界になっていった。
 さすがにこのままではだめだと感じるようになり、後悔することを意識するようにした。
 そうすると後悔を感じる自分の心は真っ黒でどんどん暗くなる感じがした。
 この暗闇から抜け出したいと思うようになり、少しづつ勉強をするようになり、
 冬休みは今までにないくらい勉強した。
 そうすると今までの白黒の世界から3色くらいのカラーの世界に変わってきた。
 このような中であきらめないということを知ったような気がする。

 M子さんは本が大好きなので、やはり独特の表現をするなあと思いました。
 確かに白黒の世界からカラーの世界に変わるのは彼女にとって大きな転換だったと思います。
 無事、私立の特進クラスに合格した(本人いわく奇跡だそうです)M子さんは高校生になっても、このまま塾を続けたいと先週話してくれました。
高校生になってM子さんがどのように自分の可能性を開いていくのかその歩みに同伴できるのはとても楽しみです。
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Posted by kobehiro at 03:47Comments(0)人生のこと

子どもの本心に出会う一瞬

2007年01月31日

子どもの本心に出会う一瞬

 2月9日は私立高校入試の日です。塾の中3生も今は各自が志望校の過去問題に取り組んでいます。自分の実力より少しレベルが高い特進クラスを受験するM子さんは、問題が難しいこともあってなかなか目標点数に届かない現状です。試験の日が近づくにつれてこちらの方が焦ってきてこんな言い方をすると逆効果と思っていても
「もうちょっと家でしっかりやってきてよ」とついついおしりをたたく言動になってしまいます。M子さんから「私だってこれでも図書館とか行って覚えようとしているのに」と言われると「そうだよなあ」と反省したりしています。
 そんな時、中3のT君から「俺、面接あるんだけど何がしたいか聞かれても、思いつかないんだよな。どうしようかなあ」との相談です。
 T君は成績優秀で理系の専門高校の推薦入試を受ける予定です。日頃から「何がしたいの」と将来のことをたずねても「うーん、何にも」と答えるだけではぐらかされてしまいます。でも、この日は珍しく本人から話をするので「本当にどんなことがその学校でしたいの」とたずねると「電子工学だからコンピューターのソフトで役には立たないけれどおもしろいものを作りたいんだよね」
 それを聞いていてふと、こないだ私が友人から送ってもらったマウスが可愛いうさぎに変わるソフトの話をしました。その話を聞いてくれたT君は「何かそんな癒し系のソフトっていいよねえ。俺もそんなちょっとした楽しいソフト作りたいなあ」と返してくれました。
 それで「じゃあ、今話したことを面接の時に言えばいいんじゃない。あなたの気持ちが伝わると思うけど」と伝えました。
 次の日、T君が「昨日、ここで話したことを学校の先生にしたら、やっと言いたいことが見つかって良かったねと言われた」と話してくれました。
面接の相談を通してT君のやりたいことの一端を聞くことができました。
何よりもいつになく真剣に自分のことを話してくれるT君に出会えたことがとてもうれしく感じました。どんなことからでもこちらが子どもたちのサインを見逃さずアンテナを張っていれば、本心に出会うことができるのだと思いました。
  

Posted by kobehiro at 10:49Comments(0)人生のこと

塾生に教えられて……

2006年12月22日

塾生に教えられて……

 大学受験のために入塾してきた高3のD君の印象は、明るいけれど自分が本当は何がしたいのかが定かではない生徒さんでした。工業高校に在学しているD君は「工学部でどこか僕のレベルで行ける大学があればいいんですけど。」と言うだけでした。
そんなD君と一緒に勉強する中でこんな話をしてくれました。
「僕、たこ焼き屋さんでバイトをしてるんですけど、こないだ耳が不自由な方がお店に来た時、手話を話せたらその人と話ができるのにと思ったんですよ。町を歩いていても障害をもった人を見かけると何かできることないかなあと思っちゃうんですよ。」

その話を聞いた時、D君ってすごいなあと思い、「その気持ちってきっと君がしたいこととつながってるんじゃない?」と伝えました。そうするとD君は「僕、実は福祉にも興味があるんです。でも今からでは、福祉関係の大学に進学するって難しいですよね」と話してくれました。ところが、しばらくたってD君がうれしそうに「先生、来年、A大学に福祉工学部という学部が新設されるんです。僕、この大学を受けようと思います。」と報告してくれました。
将来、やりたいことが決まったD君はやる気が出てきてもちろん希望通り、A大学に推薦入試で無事合格することができました。このことをきっかけにD君は何事においても積極的になりました。
小学生の時は、授業中、一度も手をあげたことがなく、中学生の時は、クラブ活動においても自分から意見を言ったことがなかったそうです。そのD君が何と新潟地震の被災者の所へボランティアに行く事を決めて、学校の先生にも届けを出したと話してくれたときは驚きました。

「阪神神戸大震災の時、僕は小学生で何も出来なかったんです。その時ボランティアの人たちの活動を見ていて、大きくなったら僕もやってみたいとずっと思っていたんです」と自分の気持ちを話してくれるD君の顔は輝いていました。

 本当に自分のしたかったことが見つかった時、必ず道が開かれていくこと、そして人は変わっていくことをD君の姿から教えてもらいました。
  

Posted by kobehiro at 09:47Comments(0)人生のこと